
ホッキョクグマ「ホクト」の展示について(6月26日) | 札幌市円山動物園
リラ(雌 8歳)との繁殖の取り組み後、ホッキョクグマ館でリラとの交代展示をしていたホクト(雄 22歳)ですが、ホッキョクグマ館の産室・出産準備に向け、旧世界の熊館へ移動いたします。移動が完了次第、旧世界の熊館で展示いたします(6月29日(木曜日)予定)。
ホクトの移動のお知らせですが、「産室・出産準備」とありますように、リラの出産へ向けての環境づくりが目的です。
ただし誤解しないで頂きたいのは、現時点でリラの妊娠が判明しているということではありません。
ホクトとリラは今年の1月から2月の1ヶ月間、同居生活を行いその終盤には交尾行動も確認されました。
この『交尾行動の確認』という事実のみをもって円山動物園では出産に向けての準備を進めている段階という理解を僕はしています。
なぜならホッキョクグマをはじめとするクマ科は着床遅延という仕組みが備わっており、春に交尾をして受精したとしても実際に子宮に着床するのは秋になってからであり、行動や外見、ホルモン数値などに変化が表れるのは秋以降だからです。
ではそれとホクトの移動に何の関係があるかというと、これは各動物園によっても考え方が異なっているのですが、円山動物園では春に交尾し妊娠の可能性のあるメスは、その後はオスとは出来るだけ早く遠ざけるほうが出産の成功率が上がる、と考えているからです。
ホッキョクグマの繁殖に関する一考察 (PDF) | 札幌市円山動物園
• 繁殖を成功させるためには、メス個体への徹底したストレス軽減が重要である。
防音および遮光の徹底による産室の環境整備
給餌量コントロールによるメス個体の管理
交尾終了後、オス個体との早期隔離
この報告はイコロ・キロルの時点で作成されたものですが、それまでララとデナリを11月まで同居させていたのを、初繁殖成功となったツヨシや翌々年のピリカのときは10月、イコキロの前年(産仔は死亡)には7月、イコキロのときで5月と、どんどん別居のタイミングを早めています。
このことからホクトも本来であればもっと早くに移動していてもおかしくなかったのですが、これは僕の想像ですが移動先の旧世界の熊館にはララがいるため、ララの発情が収まって落ち着いたこのタイミングでの移動になったのではないかと思います。
というわけでおよそ半年のホクトの豪邸暮らしは終わることとなりました。
再びホクトがホッキョクグマ館の土を踏めるかどうかは、旭山動物園の動向、つまりゆめが他園へ転出しピリカとホクトで繁殖を目指すシナリオですが、その場合はホッキョクグマ館に戻ることはないでしょう。
または、リラが妊娠・出産に成功しめでたく子どもをもうけた場合もホクトの戻る余地はありません。リラと子どもでホッキョクグマ館を独占的に使用するのは明らかです。
ではホクトのホッキョクグマ館ライフを振り返ってみましょう。
ホクト プロフィール
2000/12/08 ロシア ペルミ動物園で誕生 実弟にゴーゴ
2002/03/30 姫路市立動物園へ来園。ほぼ同時に来園したユキとペアを組み2度出産するも繁殖には至らず
2020/06/01 ユキとのペアを解消し旭山動物園へ移動。ピリカとペア
2021/12/10 ピリカが第1子となるゆめを出産
2022/11/07 リラとの繁殖を目指し円山動物園へ移動
関連リンク
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クマ類の冬眠 : 繁殖との関係 (PDF) | 北海道大学 坪田 敏男