偉大なるデナリ、死す

8月に体調を崩し治療を続けていたデナリが、9月5日の夜に亡くなったと発表されました。

ホッキョクグマ「デナリ」が死亡しました | 札幌市円山動物園

ホッキョクグマの「デナリ」(オス、29歳)が9月5日(火曜日)に死亡しましたのでお知らせいたします。

今年の8月に肝臓に多発している嚢胞が見つかり治療を続けていた「デナリ」ですが、9月5日の19時17分ごろ、残念ながら屋外放飼場にて死亡しているのを確認いたしました。

「デナリ」は1995年に入園して以来、「ララ」との間に6回8頭の仔をもうけ、長きにわたり円山動物園で活躍してくれました。

応援していただいた皆様、ありがとうございました。

献花台につきましては、9月6日より動物園センター案内前に設置いたします。

 

【個体情報】

生年月日:平成5年(1993年)11月9日 アメリカ生まれ

来園年月日:平成7年(1995年)5月1日

死亡年月日:令和5年(2023年)9月5日(29歳)

※解剖の結果については後日HPでお伝えいたします。

 

【経過】

8月8日    昼から食欲がなく、プールから出ようとしない。段差の昇り降りを嫌がる。また、お腹が膨らんだ様子(腹部膨満)が認められる

8月24日 腹部膨満の原因を調べるため、全身麻酔下での検査を実施。超音波検査で肝臓に多発した嚢胞が確認され、これが腹部膨満の原因と思われる。検査結果から予後は悪いと考えられ、肝臓を保護する薬剤や痛みが生じた際の鎮痛薬を用いた治療を行う方針とする。

9月1日   嘔吐が認められたため、吹き矢を用いて吐き気止めを投与。この日より食欲廃絶。

9月5日   食欲と活動性がなく、プールから上がることができない状態続いているため、朝に鎮痛薬を吹き矢で投与。夕方にプールから出て歩き回るが、その後、ウッドチップの上で動かなくなっているデナリを発見、19時17分に死亡を確認する。

 

【追記】

【9月7日掲載】

9月6日に北海道大学獣医学部と合同で実施しました、「デナリ」の病理解剖結果についてお知らせします。

解剖所見は以下の通りです。

1 肝臓の多発性嚢胞(嚢胞:のうほう=液体で満たされた袋が肝臓に多発した状態)

2 胸水・腹水の貯留

3 前縦隔(左右の肺を隔てる膜)の腫瘤

最終的には、肝臓の多発性嚢胞が原因の肝機能不全により死亡したものと考えられます。

病変についてはより詳しい組織検査を実施しております。結果の判明には数カ月を要する見込みです。組織検査の結果により、死因や解剖所見に大きな変更があった場合には、改めてホームページでお知らせいたします。

 

 

ホッキョクグマ「デナリ」の検査結果について | 札幌市円山動物園

【令和5年8月24日掲載】

8月24日に北海道大学獣医学部と共同で実施しました、ホッキョクグマ「デナリ」の麻酔下検査の結果についてお知らせします。

なお、「デナリ」は無事に麻酔から覚めております。

本日の検査で得られた所見は以下のとおりです。

1 肝臓に多発する嚢胞(のうほう=液体で満たされた袋が肝臓に多発した状態)

2 血液検査における肝臓の数値の異常

以上の結果から、嚢胞性の肝疾患である可能性が高いと考えられます。腹部膨満については、嚢胞の多発で腫大した肝臓が原因と思われます。腫瘍の可能性は否定できませんでした。

また、腹水の貯留も認められ、腹水は血液と同じ色をしており、肝臓から徐々に出血した血液と考えられました。

このため、今後肝機能が著しく低下する恐れがあり、予後は悪いことが予想されます。

今後は、肝臓を保護する薬の投与、痛みが生じた際は鎮痛薬の投与などの治療を行っていきます。

引き続き、「デナリ」の状態を見ながら、適切に看護、治療を進めてまいりますので、「デナリ」への応援をよろしくお願いいたします。

 

【令和5年8月19日掲載】

ホッキョクグマ「デナリ」(オス、29歳)の麻酔下検査についてお知らせします。
現在、痛み止めを投与しており、食欲についてはやや回復傾向にあります。しかし、8月10日に診察したところ、腹部膨満(ひどくお腹が張り、大きく見える状態)の症状が8月8日に比べより顕著になり、8月18日の診察でも継続していました。腹部膨満は、肝臓や脾臓などの内臓が大きく腫れている場合や、お腹のどこかに腫瘤が存在する場合、大量の腹水(病気によりお腹に水がたまった状態)が存在する場合等に見られる症状です。

「デナリ」は高齢であり、麻酔による身体への負担が心配されますが、原因を調べ、より的確な治療をしていくため、また、大量の腹水がたまっていた場合、腹水をある程度抜くことでデナリの体への負担を軽減することを目的に、万全の準備を整え、8月24日に麻酔下の検査を実施いたします。

この検査に伴い、一時展示を中止いたしますので、お知らせいたします。
なお、検査結果等につきましては、随時、ホームページにてお知らせいたします。

 

【令和5年8月9日掲載】

ホッキョクグマ「デナリ」(オス、29歳)の体調不良についてお知らせいたします。
8月8日に「デナリ」に以下の症状が見られています。

1 長時間プールに入り出たがらない。
また、プールから出てもすぐにプール内に戻ってしまう。
2 お腹が張っている。
3 採食にムラがある。
4 段差をきらう。

以上の症状から、関節の痛みなどを疑い痛み止めの投薬を行っております。また、本日以降も観察を続け、関節の痛み以外の病気が存在する可能性や、更なる治療法についても模索をしていく予定です。
現在、「デナリ」は空調が効いている寝室と屋外放飼場を、出入り自由に過ごしています。寝室に入っている際にはご覧いただけない場合もございますが、ご理解のほどよろしくお願いします。

 

正直言いますと、デナリはもっと長期戦になると勝手に思っていました。

まだ自力で歩いたり出来ていたので、もっと弱って動けなくなってバックヤードで非公開になり会えなくなるところまで想像していました。

しかしあっさりと、と言うと言葉が悪いかもしれませんが、実にあっさりと逝ってしまいました。

こういう日がいつか来ることは覚悟していましたが、それでもその日が来るのは数年あとにしてとの願いも叶わなかったです。

 

ここではデナリの経歴を振り返るだけに留めておき、過去の思い出写真はまた改めて後日投稿することにします。

1993/11/9 アメリカ ホーグル動物園にて父カーマイケル、母シヌックの間に生まれる(Denali 偉大なるもの と名付けられる)

1995/5/2 円山動物園へ

2003/12/11 ツヨシ(メス)生まれる(母はララ、以下すべて同じ)

2005/12/15 ピリカ(メス)生まれる

2008/12/9 イコロ(オス)、キロル(オス)生まれる

2009/3/31 釧路市動物園へ出張(クルミとペアリング、繁殖無し)

2010/3/4 円山帰還

2010/12/25 アイラ(メス)生まれる

2012/12/8 ポロロ(メス)、マルル(メス)生まれる

2014/12/21 リラ(メス)生まれる

2017/12 新施設のホッキョクグマ館に移動(約1ヶ月)

2019/4 ホッキョクグマ館で暮らす(約4ヶ月)

2023/9/5 死亡(29歳)

ララとの間に6回8頭の子どもが生まれました。

ララの他にキャンディ、さつきともペアリングしましたが繁殖には至りませんでした。

ピリカ(旭山動物園)は2021年にホクトとの間にゆめを授かりました。デナリ、ララにとって初孫です。

 

たくさんの子孫を残してくれたデナリに大感謝です。

デナリがいなければ僕はこの世界に足を踏み入れていなかったことでしょう。

偉大なる男よ、どうか安らかにお眠りください。

 


関連リンク

ホッキョクグマ「デナリ」が死亡しました | 札幌市円山動物園

ホッキョクグマ「デナリ」の検査結果について | 札幌市円山動物園

 

国内ホッキョクグマの約4分の1の父親、「デナリ」死ぬ 円山動物園 | 朝日新聞

ホッキョクグマの雄「デナリ」死ぬ 札幌・円山動物園 雌ララとの間に国内最多の8頭の子もうける | 北海道新聞

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